日本には、9月に敬老の日があります。シルバーエイジの方はだんだんと増えてきています。年に1回のこの日にだけ、お年寄りのことを考えて祝うのではなく、私たちは日ごろからお年寄りをもっと大事にするべきではないでしょうか。シルバーPowerはとても大事です!

昔の日本は家族のつながりが強く、たいていは、一つ屋根の下に世代を超えるメンバーが住んでいました。ひいおじいちゃんやひいおばあちゃん、おばあちゃん、おじいちゃん、パパ、ママや子どもたちが一緒に暮らすのがあたりまえでした。家の中にはお年寄りの知恵があり、音楽やもの作り、食べ物や料理、子育ての知識、生活や季節や文化に関する大事なことなど、いろいろなことが自然に、新しい時代へと流れていきました。しかし時代が変わり、仕事のために地方から街へと引っ越しがあったりして、家族と離れることが多くなり、時代から時代への知恵を伝えてもらう機会は少なくなりました。みなさん忙しく、精一杯頑張って生きていますので、最近では家族が顔を合わせるのは、お正月やお盆休みに集まるときだけになりました。残念ながら、一番損をしているのは子どもたちだと思います。

アメリカで生まれた私の娘たちは、長女は3歳まで、次女は11カ月まで、アメリカのおじいちゃんやおばあちゃん、ひいおばちゃんの近くで暮らしていました。英会話だけでなく、おじいちゃんとおばあちゃんから自然に、いろいろなことを吸収し、学びました。動物園、公園、クリスマス、ハロウィン、買い物、海、山への旅などなど、思い出はいっぱいあります。考えてみれば、おじいちゃんとおばあちゃんのおかげでアメリカでの考え方のエッセンスやユーモアを学べたのだと思います。

 


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アメリカのおじいちゃんと動物園。
 

 


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カリフォルニア州のある湖にて。
 

 


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日本のおじいちゃんとおばあちゃんと娘。神社かな?
 

私の両親は厳しく、NOは ノーでした。そのNOの理由の説明もよくわかりました。そのため娘たちも、マナーや基本的なルールをすぐ理解することができました。おじいちゃんも娘たちが大好きでしたから、よく話を聞いてくれ、いろいろなことを教えてくれました。その後、1980年に日本へ引っ越してからは年に一回、だいたい2~3週間ほど、アメリカへ戻って会いました。時間が少なくなりとても残念でしたが、会えるわずかな時間を大事にしました。

日本に来てすぐ、日本人の主人の親と一緒に暮らしはじめました。私自身の生活や文化、食べ物、ルール、考え方、言葉などががらりと変わりました。日常生活やあたりまえのことも基本的に違います。たとえば、それまで別々に寝ていた私たちは突然、おじいちゃんの命令によって4人で同じ部屋に布団で寝ることになったのです。子どもを守るように、私たち親の間に川の字のように寝るのは、私にとっては不自然なことでした。夫婦はプライバシーのために別々に寝るべきだと思っていました。また、毎朝布団を干す習慣もありました。自分が寝たベッドを外へ出し、みんなに見えるように干すのは少し恥ずかしかったです。また、アメリカでは子どもは小さい時から、起きたら自分のベッドをきれいにする(make the bed)という習慣がありました。布団は重いので、外へ出すことは無理。子どもたちが大きくなってアメリカに行ったとき、私の母がビックリしていました。なぜならば、私たちはずっと日本の布団に寝ていたため、娘たちはアメリカでベッドをきれいにする習慣を知らなかったのです。

日本では食べる時、テーブルや椅子の代わりに畳の床に座り、こたつの周りに集まりました。アメリカにももちろん日本の食べ物はありましたが、日本のおばあちゃんの料理は全然違いました。毎朝納豆と漬物、ご飯、味噌汁、魚。確かに健康的でしたが、わたしたちにとっては大きな変更でした。ただ、床の上で近くに座るのは、仲良くする気持ちになりました。こたつもおもしろかったですが、長い間に座っているといつも背中が痛くなりました。また、そのまま食事の後に横になって、家族が寝てしまうことにもびっくりしました。隣のヒーターの上でおもちを焼くことも不思議でした。アメリカでは体験できないこうしたことは、娘たちにもうれしいことでした。

おばあちゃんからは、本当にいろいろなことを学びました。日本の料理やその作り方(ぬかみそ、漬物、梅、らっきょう、お米を炊くこと、野菜や果物の切り方、おせち料理)。それからカゼをひいたら、薬よりも昔の家で作れる飲み物(生姜と黒砂糖、長ねぎなど)を作ってくれました。それらを飲みながら、伝統的な話や日本の習慣、文化を自然に教えてくれました。保育園へ娘たちを連れて行くときや買い物へ行ったときには、おばあちゃんがずっと、日本の童謡を歌って教えてくれました。

 


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アメリカのおじいちゃんとおじいちゃんの母(娘たちのひいおばあちゃん)と私。
 

 


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アメリカのひいおばあちゃんと娘。
 

 


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日本のおばあちゃんと栗拾い!
 

お風呂の時には娘達と一緒に入って、その日のことや日本語の正しい使い方、日本語で数を数えたりひらがなを覚えたりなど、遊びながら、笑いながら、肌と肌を感じて覚えていました。これは素晴らしい習慣だと思います。

アメリカでは、私の母と子どもたちがお風呂に一緒に入ることはありません。なぜなら、アメリカのお風呂は日本と違うからです。バスタブは狭く、しかもお湯のなかにいる間に自分のからだを洗います。浴槽の中のお湯は汚いし、またお湯はすぐに冷たくなります。ですから、親と一緒に入る習慣がないのです。
母が娘に裸の姿を見せる習慣もなく、とても恥ずかしくてできませんでした。そのかわり、ボードゲームやトランプ(playing cards)、パズル、クラフトなどをお父さんお母さんと一緒に楽しみました。

私の母は来月91歳になります。パーキンソン病や慢性の肺の疾患, 白血病、高血圧など、病気がたくさんあります。両ひざにプレートがありますし、また、目はほとんど見えない状態です。最近は歩き方も変わり、今まで自分でできていたこともすることがだんだん難しくなっています。歳をとるということには、勇気が必要です。
アメリカでも日本でも、大勢のお年寄りが老人ホームに入ります。元気を出すことが難しいのではないでしょうか。たとえば孫の顔を見ることがあれば、生きる勇気が出ます。今も、家に娘がいると母はとても安心するようで、私までうれしくなります。孫は宝物です。笑顔の元です。若くいられる魔法なんですね。

赤ちゃんのいる親であるみなさんがこの記事を読んでくれているのは大変うれしいです。そこでみなさんにお願いがあります。たとえ家族と離れても、おじいちゃんやおばあちゃんと孫が会える機会を是非つくってください。赤ちゃんや幼児にとって、おじいちゃんやおばあちゃんの知恵、愛は本当に大事です。子どもがお年寄りの近くにいると、素直な心が自然に育ちます。思いやりの気持ちも、自然に覚えていきます。また、日本の昔からの知恵、マナー、料理、食べ物、歌、昔話、文化を大切に守るためにおじいちゃんとおばあちゃんの影響は必要です。私の娘たちはアメリカと日本のおじいちゃんとおばあちゃんと出会い、たくさんの知恵をもらい受けました。とても幸せです。考え方、文化、生活の生き方が違っても、それとは違う、素晴らしいことをたくさん学んだと思います。

赤ちゃんはあっというまに大きくなります。大きくなると同時に、おじいちゃんやおばあちゃんも歳をとります。時代の流れは早いです。将来のために私達親は、できるだけお年寄りと子どもたちの出会い、遊べる時間、一緒に食べる機会や過ごす時間を大切にする必要があると思います。シルバーPowerは必要です。世の中にはさまざまなことがありますが、優しい気持ちが必要です。年寄りから忍耐、優しさ、尊敬すること、素直な心を学びます。とても重要です。娘達はすっかり大人になっていますが、昔の話を聞くとやっぱり、おじいちゃんとおばあちゃんと一緒に過ごした思い出は心の中にたくさん残っているようです。赤ちゃんとおじいちゃん、おばあちゃんとの出会いと関係を大事にしましょう。一年に1~2回より、会える回数を多くすれば、みなさんの考え方や心も成長すると思います。