子どものころ、どんなおもちゃで遊びましたか? 親になって、自分の子どもたちと同じおもちゃでの遊びを楽しんでいますか? ご自身の子どものころの遊び道具やおもちゃはきっと、時代の流れが想像できないほど、現在とはだいぶ変わっているのではないでしょうか。 今の赤ちゃんや幼児は、きょうだいや友達、大人たちの使っているタブレットや携帯、パソコンのスクリーンを小さいころから目にしています。親やおじいちゃん、おばあちゃんたちにとっては新しいテクノロジーですが、子どもにとってはおもちゃと同じです。覚えにくいデジタルのものでも、子どもたちは不思議なことに、あっという間に慣れてしまいます。 デジタルの流れはあまりにも早く、今の親たちは、それらの波からもっとしっかり子どものことを守らなければならないと思います。 その話をする前に、思い出したのです。私には姉と弟がいました。真ん中の子である私に、両親が「マジックリンク」というニックネームをくれました。きょうだいの間に生まれた、家族をつながらせる役割をもつという意味です。 小さいとき、お姉さんと一緒に遊んだのはお人形遊びでした。その人形は、今でもまだ大切に持っています。からだがかたいプラスチックでできている、テリー・リーというブランドの人形でした。私は人形の手や足の爪にマニキュアをつけました。アリゾナに住んでいたおじいちゃんが、その人形のために木造のcradle(ベッド)を作ってくれました。おばあちゃんは、アメリカインディアンの人形をくれました。その人形はとても柔らかかったです。弟のおもちゃは、お父さんと一緒に使った飛行機やプラスチックモデルでした。

 

初めての大きな人形と私。大好きでした。 車もかっこいいでしょ?

 

しかし、私たちのファミリーにとって「おもちゃ」といえばパズル! 家族みんな、パズルが大好きでした。 休みの日や食事の後には、ダイニングテーブルか長いコーヒーテーブルの上にパズルを出して、みんなで一緒に楽しみました。お父さんが、パズルを上手にやる方法を教えてくれたのを覚えています。同じ色のピースを集めることや、まずは外側のピースを探したり…。ファミリーの大切な時間でした。 また、そのころにはアートのキットがいろいろとありました。かたい型紙のようなベースに、あるデザインが書いてありました。私の両親が日本のアートが大好きだったせいか、不思議なことに、私も日本の景色や着物を着てる情勢の絵を選びました。 そのデザインのラインの上にボンドを塗ります。そのボンドのうえにかたい糸(金色、銀色、黒いなど)をピンで留めながらつけるのです。これでアウトラインができます。 そのあと、部分的に細かい色のあるsand(砂)をボンドで塗ると、とても素敵な絵になります。額に入れて壁に掛けるとやっぱり幸せでした。このようなアートやクラフト活動をよく家族でやりました。「おもちゃ」ではありませんが、家族の楽しい遊びでした。 考えてみると、いわゆる「おもちゃ」の思い出は少ないですね。なぜならば、いつも外の庭で木に登ったり花を植えたり、遊んだりしていたから。その代わりに、家族と一緒にトランプ(playing cards)やボードゲームもやりました。特にScrabble(スクラブル)やMonopoly(モノポリー)、Kootie( シラミゲーム)、Dominoes(ドミノ)などのボードゲームはとても楽しかったです。 娘たちが小さかったころにも、おもちゃは少なかったと思います。くにみが小さいころには、天井からつるされた幼児のためのブランコがありました。その中に座らせてジャンプすると、上にあったスプリングのためにうさぎやカンガルーのように動きました。笑いながら足でジャンプしていたのを覚えています。 お人形さんもありましたし、ボールや音がするおもちゃもありました。まゆかとくにみに聞いたところ、ふたりが大好きなおもちゃは、アメリカのおばあちゃんとおじいちゃんからもらった、1982年発売の「Glo Worm」。からだは毛虫(caterpillar)のようにやわらかく、頭に布の帽子をかぶって、顔はビニールでできていました。その人形のからだを強く押すと、頭が優しく光ります。娘たちはこの人形と一緒に寝るなら夜は怖くない、と言いました。

これがGlo Wormです。 推すと光ります。   娘たちは保育園でたくさんのおもちゃと遊びました。まゆかはぞうの人形をいくつか持っていましたが、特にアメリカのおばあちゃんからもらったぞうがお気に入りでした。 くにみは小さい白い犬の人形Lucky(ラッキー)を持っていました。ある日一緒にアメリカへ行き、日本の家に戻ったら、Luckyがみつかりません。すぐ航空会社に電話をして、飛行機の座席にいるのを発見! 私たちはまた航空会社へ、くにみの大切な犬を迎えに行きました。Luckyは、今でも大切に持っています。 私たちが最初に住んだ日本のアパートはとても小さく、アメリカから持ってきたソファなどを置いて布団を敷いたらもう歩くスペースもありませんでした。しかしアメリカのおばあちゃんとおじいちゃんの家には部屋がたくさんあり、遊ぶスペースもたっぷり。 広い庭までありました。そこでおじいちゃんと一緒に凧作りやおもちゃ作り、プラモデルなどをいっぱい楽しみました。おじいちゃんはモノを作る天才でした。設計士だったため道具もたくさんあり、娘たちは夏の間にアメリカに行った時におじいちゃんと一緒にGrandfather Clock(大きな振り子時計)を作りました。とても立派な時計でした。 今、おじいちゃんはいませんが、娘たちはその時計を見ると思い出がいっぱい浮かぶと思います。 おもちゃの代わりに、私たちはよくトランプ(playing cards)をやりました。おばあちゃんがアメリカのカードゲームをいろいろ教えてくれました。たとえばCrazy 8’s, Old Maid(ババ抜き)、Fish、solitaire(ソリティア)などなど…。カードゲームはナンバーや数などを自然に覚えることができ、子どもにとってとてもよい遊びだと思います。また、先ほどあげたいろいろなボードゲームもとても人気でした。 頭を使ったり、数える練習になったり、知識も必要。また、遊びながら笑ったり、がっかりしたり、競争したりしながらお互いに話がはずみます。会話も大事。とてもおもしろい「おもちゃ」でした。 また、もうひとつ、楽しかった遊びがありました。車の中での遊びです。おじいちゃんとおばあちゃんの車に長い時間乗ると、新しい遊びも覚えました。 アメリカの道路の横には、標識や広告がいっぱいあります。アルファベットを覚えるため、娘たちとよくAlphabet Game(アルファベット・ゲーム)をやりました。窓の外を見ながらABCを順番に探すのです。もうひとつのABCゲームは、最初の人がアルファベットの「A」から始まるものを言わなければならない、というもの。たとえば、“I’m going on a trip and I’m taking an Alligator”(旅に行きますからワニを持っていきます)。そして次の人は、このように続けるのです。:I’m going on A trip and taking an Alligator, a Banana..”自分の前に言われた言葉を覚えていて、そこにつなげなければならないのです。だんだん長くなっていき、どんどん難しくなります! アルファベットは26文字あるため、最後の人は全部覚えなければならないのです!”I’m going on a trip and I’m taking an Alligator, a Banana, a Cat, a Dinosaur, an Elephant, a Flamingo..”など! とても頭が働く、おもしろいゲームです。 考えてみれば、おもちゃ=遊びですよね。おもちゃは一人で楽しむこともできまずが、2人やそれ以上大勢になると、もっとおもしろいし、もっと楽しいです。 現在、多くの子どもたちはタブレットやゲーム機などを使ってデジタルゲームをやっています。仲間と一緒にいても別々にやっていることもあり、お互いに会話をする必要もないようです。家族と遊ぶゲームも、少ないのではないでしょうか? 私は、今こそ親は、デジタル時代の流れをモニターするとき、積極的に子どもと一緒に家族でできるゲームや遊び、アートや音楽活動を考えてやるべきだと思っています。一緒に遊ぶ、一緒にものを作る、一緒に話す、一緒に挑戦するなどは、これからの時代に本当に重要なことだと思います。今こそ親は子どもたちに、誰かとかかわることができるカードゲームやボードゲームのおもしろさを伝えてあげてほしいのです。デジタルばかりに頼らず、もっと人間的な遊びを教えるのも、親の大事な仕事ではないでしょうか? ブロックや積み木、水遊び、砂遊び、泥んこ遊びなど、自然を身近に感じさせる遊びもすばらしいものです。五感を使って笑いながら、想像しながら、話をしながら遊べば、なによりも子どもの心に残るのではないでしょうか? この世の中で一番必要なのは親子の笑い声です。大切なのは目と目を合わせ、ハートとハートを向かい合せて話をすること。一緒に遊ぶ心なのではないでしょうか。