今月は、ちょっと難しいテーマかもしれませんが、“贈与の制度”を取り上げたいと思います。2015年4月に「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」という名前の新制度ができました。しかも、この制度を含めて実は現在、「贈与の大盤ぶるまい」の状況になっています。何が大盤ぶるまいなのか、ご説明します。

子育て資金なら1000万円まで非課税で渡せます

「結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税措置」とは、「結婚や子育てにかかる資金であれば、1000万円までを子や孫(20歳以上50歳未満)にまとめてあげても贈与税はかかりませんよ」という制度です。通常であれば、1年間に110万円を超える金額を贈与すると、(使い途によっては)贈与税がかかってしまいます。ところが、この制度を利用すれば、1000万円をあげたとしても、贈与税が1円もかからないのです。

ちなみに1000万円のうち、300万円までは結婚資金に充てられます。結婚資金で300万円分を贈与した場合、子育て資金では700万円まで贈与できるわけです。

教育資金も1500万円まで贈与が可能です・・・

さらに2015年5月現在、利用できるのはこの制度だけではありません。2013年4月にスタートした「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」も利用できます。こちらは、高校や大学の学費などの教育にかかる費用であれば、1500万円までは贈与税がかからずに子や孫(30歳未満)にあげられる制度です。1500万円のうちの500万円までは、塾代や習い事代などにも充てられます。

結婚・子育て、教育に加えて、さらに「住宅取得等資金の贈与の特例」という名前の制度もあります。以前からある制度ですが、住宅を取得する年によって非課税限度額が変わってきます。

平成27年中に住宅取得資金を援助する場合の非課税限度額は、一般住宅で1000万円、省エネ住宅に該当する住宅であれば1500万円まで。省エネ住宅というと、かなり単価が高い住宅と思えるかもしれませんが、ハウスメーカーによっては、標準仕様で省エネ住宅に該当する物件も増えてきています。

結婚から住宅取得まで、最大で4000万円の非課税贈与が可能に

ここまでご紹介してきたように、結婚・子育て、教育資金、住宅資金の3つの資金を合わせると、1人のお子さん、あるいは1人のお孫さんに対してなんと! 合計で4000万円もの非課税贈与が可能になるのです。余裕資金のある祖父母にとっては、相続対策として利用することもできますし、これらを大盤ぶるまいと言わずして、なんというのでしょう…?

政府としては、資産のある高齢者から若い人にお金を移動させて、若い人にもっとお金を使ってもらいたいという狙いがあるわけですが、贈与制度の拡充によって、貧富の差がより拡がりそうな気もします。“カエルの子はカエル”ではありませんが、お金持ちの子どもは豊かな暮らしを継承でき、経済力のない親の子どもは経済力のないまま暮らすといった、努力では補いきれない差が生じるのではないかと、余計な心配をしてしまいます。

あっ、この点に関しては、個人的なやっかみが少し入っていることを、付け加えておきたいと思います。

 次回更新は6月12日の予定です。