楽しいおいしい!日本の夏

8月です! 今はカリフォルニア州にいますが、日本の夏の思い出は強く心に残っています。花火大会、お盆休み、盆踊り、蚊取り線香やその煙、蚊の飛ぶ音、スイカ、梨、扇子、浴衣、風鈴の音、かき氷、冷たい茶そば、カブト虫、麦茶…。
日本の夏は蒸し暑いけれど、楽しい、おいしい季節です。

今年の日本の夏はいかがですか? 8月になると、日本の家族のみなさんは短いお盆休みの期間を利用して車や電車、飛行機などに乗って「自分の国」であるふるさと、自分の家族のルーツのある町や家へ戻ります。愛する大事な家族や親せきを訪ねます。多くの家庭では、その間に自分たちの家族のお墓参りもします。とても立派な、大切な習慣だと思います。

娘たちが小さかったころ、私たちはお盆休みに帰省する必要がなく、遠くまで出かけることは少なかったです。その代わり、お盆の車が渋滞しているようすをテレビで見て驚いたのを覚えています。長い時間、ときには半日以上家族が車に乗り、ようやく目的の家に着いたら、2~3日の短い滞在期間でまた車に乗って、行きよりももっともっと長いラッシュで自宅に戻っていました! 渋滞にかからないよう、早朝に出発することもありました。また、新幹線のホームが大混雑している映像もよく見ました。家にいてよかった~!と思った覚えがあります。あの渋滞の中、がんばった家族のみなさん! 本当におつかれさまでした。

「仏壇」が教えてくれたこと

また、日本のおじいちゃんとおばあちゃんといっしょに住んだ時、仏壇を初めて見ました。その意味や習慣も、よくわかりませんでした。毎日水や果物(お供え)を必ず置きました。静かな朝に響く鐘の音も、日本での大切な音ですね。娘たちはまだ小さく、よく理解できなかったようですが、大きくなってから「親戚を大事にする大切さがわかった」と言っていました。

娘たちは大きくなると、お盆休みにパパの、また私の親友の家へ行きました。その家族の仏壇やお墓に対する挨拶、マナーや思いやりを見て、心が素直になったと思います。お家に着き、果物やお土産を渡したら、まず、一部を仏壇のうえに置きました。お線香の火のつけ方も、消し方にも決まりがありました。仏壇の意味はよく分からなくても、小さいながらもきっと、日本の文化を自然に吸収していたのでしょう。

また、親友のふるさとへお墓参りに行ったら、家族のみなさんはていねいに、素直な心でお墓の掃除をして花を置き、食べ物や飲み物、たばこなどを供え、祈ったり言葉をかけたりしていました。そのようすに私は感動しました。アメリカ人として初めて見たこの習慣はとても不思議であり、すばらしい行動だと感じました。愛されたその方の姿はこの世に消えてしまいましたが、毎年家族が集まって、その方のために生きている人たちが思いを寄せたり感謝を表したりすることは、とても美しいことと思いました。

アメリカでは、私たちにはお墓参りの経験はありませんでした。アメリカと日本の習慣は全然違い、アメリカには日本のお墓参りのような行動や習慣、意味などはなく、決まったルールもありませんでした。日本の習慣には歴史があって、より深いと思います。娘たちは周りの方、友達、家族のみなさんの習慣に対する気持ちに触れることができました。それは、とても大事な経験となりました。

子どもと「死」

子どもは小さいころから、親戚や亡くなった方に対する思いを大切にする心を育てるべきではないでしょうか。“死”は子どもにとって、非常にわかりにくいことです。愛する人の姿が急になくなることは、子どもにはとくに理解しにくいと思います。「どこに行ったの? いつ戻るの? なぜいないの?」など、たくさん質問をされるでしょう。答えることも難しいと思いますが、親として、できるだけ、素直な心で答えるべきだと思います。きっと何回も質問や悩みが出てくるでしょうが、時間をかけて、少しずつ子どもが理解できるように話をしてください。
子どもには、お葬式への参列もきっと難しいと思います。泣いている家族を見て、自分も泣きたくなるかもしれません。男の子でも女の子でも、泣くことは大事です。涙は人間の悲しく苦しい気持ちを自然に洗ってくれるのです。ですから、子どもはもちろん、パパもママも、泣きたいときには遠慮しないで、泣きましょう。からだの中の悲しみを、少しでも洗い流しましょう。

娘たちが13歳と15歳のころ、大好きなパパが亡くなりました。二人とも、大変ショックを受けていました。病院で、パパが目の前で最後の息を引き取ったようすをみても、とても理解するのが難しいようでした。
泣いても泣いても、パパは戻らない。
何年間も苦しくて悲しい気持ちが続きました。親を亡くす体験は、どんな子どもにとっても重いことです。パパが亡くなり、私は長い間母として、娘たちを育てるために一所懸命、力いっぱい頑張ってきました。娘の涙をふいて、
思いっきり抱きました。愛を込めて話を聞きました。それは親の義務ではなく、「愛」です。親が1人になっても、パパとママの務めを肩に乗せ、愛を込めて頑張ります。
日本にいる娘たちは今まで、お盆だけではなく、パパの誕生日や父の日、それ以外の日にも、パパのお墓参りに行きます。小さい時から覚えた習慣を守って、この23年間ずっとパパのお墓に行って、パパやおじいちゃん、おばあちゃんへ挨拶をしています。日本の大事な心を理解して、日本に感謝し、その習慣を守っていることがとてもうれしいです。

美しい提灯

私がアメリカから日本に留学してきた大学時代の初めての夏のことです。街を歩いていたとき、いろいろな店を見た中に、ある店のディスプレイに、大変美しく、見たことのないものがありました。それはスタンドのある、電気のついたたくさんの提灯でした。私はその綺麗なデザインと色、優しさに感動し、アメリカにいる日本のものが大好きな親のためにその提灯のセットを買いました。しかしその時には、日本語がよく理解できていなかったので、その提灯がお盆のためのものであることがよくわからず、ただの美しい部屋の飾りだと思ってアメリカまで送りました。父と母は水色と花の柄がとても気に入り、電気をつけて家に飾って本当に喜んでくれました。もしかしたら一年中飾るものではなかったのですが、親にとっては、日本からの大切な贈り物でした。

夏の車内に気をつけて!

最後にみなさんにお願いがあります。前にもお伝えしましたが、とても大事なことなのでもう一度。
今年、アメリカは大変暑いです。アメリカでは毎年、何十人かの子どもが親に、暑くなった車のなかに忘れられ、苦しんで亡くなりましたとのニュースがあります。子どもだけでなく、犬や猫の悲しいケースもあります。
親が話す、よくある理由としては「子どもを忘れました」「子どもが車にいることを知りませんでした」。どうして子どもを忘れることができるのでしょうか!?
車を止めたら携帯やゲームに夢中になってしまう? それなら車で買い物に行くでしょうか? それとも、ちょっとの時間だけの買い物のつもりで子どもを車に残して店へ行く? 自転車も同じです。買い物があれば、自転車を止め、子どもと一緒に行った方が安心だし、安全です。
子どもはかけがえのない宝物です。たとえば車に乗った時には、自分のハンドバッグや携帯など、必要なものをバックシートに必ず置くようにすれば、車を止めたときにまず、後ろにあるそれらの必要なものを思い出して、子どもも見えるでしょう。携帯は置いて、まず子どもが先。ペットも同じです。アメリカでは、車の中に赤ちゃんや子ども、ペットだけがいるのが確認できたら、見つけた人はすぐ警察に連絡します。ときどき、見つけた人が車の窓を割って、中にいる子どもやペットを助けることもあります。
外の温度と車の中の温度はだいぶ違います。夏は暑いです。大切なお子さん、大事なペットも守りましょう。みなさんにとって、すてきな思い出のある夏になりますように! HAPPY SUMMER TO YOU!

 


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