季節がはっきりしている日本では、季節が変わるとお腹が喜ぶ楽しみがいっぱい出てきます。季節に合った食べ物は、日本の独特な文化と深いかかわりがあります。きっとみなさんも同じ気持ちなのではないでしょうか。

最近では、くだものなどはほとんど一年中ありますが、やっぱり、その季節にしか食べられないものが一番、思い出の中に残るのでしょうね。

 

先日、大きくなった娘たちと、子どものころの「冬の食べ物」の思い出話をしました。二人とも一番大好きな思い出! と言ったのは、豚汁でした。

長女は現在、仕事のために中国にいます。この前はスカイプをしながら、娘が料理を作っていました。手に持った大きなゴボウ(本当に大きなゴボウでした!)を見せてくれました。「何を作っているの?」と聞くと「キンピラ。それから炊き込みご飯も」と答えてくれました。「やっぱり、どこへ行っても日本の料理がおいしいね」と言うのです。

 

豚汁を初めて食べたとき、娘たちと私の一番の大好物になったのはサトイモとゴボウでした。それからは、いつも豚汁のなかにたくさん入れて作っていました。サトイモとゴボウは本当においしくて、 豚汁作りにはとても大事な材料だと思います。

サトイモもゴボウも、私が子どものころには食べたことがありませんでした。日本のおかげ、娘のおかげ、おばあちゃんのおかげで、知らない料理をたくさん覚えたり、食べたり、作ったりできたんですね。

アメリカの料理ではゴボウやサトイモを使ったことがなかったので、ゴボウを初めて見たときにはびっくりしました。だって、長い、長い、長いどろどろしている根っこ(root)ですよ! 買い物のときには、ゴボウはあまりにも長くて他の物と一緒に持って帰るのは大変! 袋に入れても長いからはみ出すし、ちょっと持ちにくいし…。本当に不思議な野菜だと思いました。でも、ゴボウは豚汁やキンピラにも必要な“ドラマチックな”野菜です。寒い冬が過ぎてからも、娘たちはよく温かい豚汁を注文してきました。きっとそのときから “お代わり”という言葉を覚えたのだと思います。

 

サトイモも大好きでした。娘たちと一緒に、よく新幹線に乗って出かけました。日本の風景を見ながらいろいろな会話をしました。ある時、サトイモの話が出ました。新幹線の窓から見た山の近くに竹林がたくさん見えました。竹の葉は鳥の羽のように、風のなかで踊っていました。季節によってはサトイモもいっぱい見えました。葉っぱはとてもとても大きくて、娘たちはその葉っぱを見て「あの葉っぱは何の葉っぱですか? ぞうさんの耳みたい」と聞きました。私も、サトイモの葉っぱはたいへんきれいな独特の形だと思いました。

娘の質問を聞いて、私が初めて日本に来た留学生時代を思い出しました。そのとき、娘と同じように新幹線の窓から大きな葉っぱを見て、不思議な気がしました。先生にたずねて、その植物の名前を知りました。でもその時私は、サトイモの形や味について何も知らなかったのです。

その話を娘に伝えた時、娘たちは私と違って、サトイモの形とその味をよく知っていました。サトイモは小さくても、葉っぱはすごく大きいです。不思議ですよね。食べ物は、人生における一つの大切な冒険ですね!

 

娘たちがアメリカで生まれたときには、日本食は今のようには知られていませんでした。ですが最近では、アメリカで人気のある、健康についてのテレビ番組で、すばらしい野菜としてゴボウが紹介されています。また、料理番組のなかに日本語の言葉としてよく出てくるのは“甘み”です。びっくり! そのほか、日本の人気の食材やよく聞く日本語のメニューは、しいたけ、のり、パン粉、大根、しそ、うに、松茸、お茶、ゴボウ、餃子、ラーメン、唐辛子、こんぶ、わさびなどなど…。たくさんあります。

 

冬の大好きな食べ物はまだまだあります。やっぱり冬といえば中華まん。たくさん食べました。子どもたちが幼稚園や小学校のころには、肉まんやあんまん、カレーまんはありましたが、今のようなピザまんや焼肉まんなどはありませんでした。私たちにとっては、ホカホカ、フカフカしている、おいしくて楽しい不思議なパンでした。

いつも思うのですが、日本のコンビニに肉まんが出てくるのは冬の始まりを告げる大切なできごとです。春がくると消えていきます(もちろん冷凍してあるものや、中華街には年中ありますが…)。私たちの冬のお楽しみのひとつは肉まんとカレーまんでしたが、3人とも一番好きなのはカレーまん。よく半分に分けて両方をいっぺんに食べていたものです。

 

カレーまんといえば、すぐに浮かぶのがカレーライス。娘が小さいときには、きっとみなさんと同じようにカレーを食べました。甘口、中辛、そして辛口のカレーがありますが、パパは甘いカレーよりも辛いカレーが好きでしたから、うちではいつも甘口と辛口を両方作っていました。

次の日のカレーの方が味が濃くておいしい、と感じるのもおもしろく、娘たちの好きな朝ごはんは、ときどきのカレーライスでした。お腹もいっぱいになるし、からだは温まるし、にこにこしながら幼稚園へ行きました。

また、89歳になる私の母も、日本のカレーライスが大好き!(特にチキンカレー)。夕ごはんにカレーを食べても、朝起きたらまた、朝ごはんにカレーライスを食べるほどです。さらに、お昼に同じカレーも食べることも…!あきることはありません。
一番好きなのは甘口と中辛口のルーを混ぜるカレー。そして、かならず人参をいっぱい入れること!そうするととっても幸せなんです!

 

日本の学校の英語のテキストでは、カレーライスを紹介するとき、英語の言い方としてCurry and Riceと教えているテキストもあります。昔、英語でCurry Riceの歌を作詞したとき、ある監修の方から、歌のタイトルなどをCurry RiceからCurry and Riceに変更するように言われました。その理由は日本の教科書に合わせるため。でも実はアメリカでも日本の料理はけっこう人気があり、アメリカでも、またインターネットでも、一般的にはCurry Riceとそのまま呼ばれています。他に調べると、呼び方は Curry Rice、またはJapanese Curry Riceです。

日本のカレーはインドのカレーと違いますよね。なぜなら、日本のカレーはご飯の上にかけないで、ご飯の横にのせるから。インドカレーは英語ではCurry and Rice, またはRice and Curryと呼びます。うれしいのは、日本のカレーライスは世界中でよく知られていること。カレーライスがあればほとんどの子どもは喜ぶでしょう。家庭料理の一番の思い出はカレーライスでしょうか。日本の料理の力はすごいですね。Curry Riceに感謝します!

 

2月は中国でのお正月や、それから多くの国にValentine’s Day、そして日本では節分の日があります。節分といえば「鬼は外、福は内!!」豆まきですね。

これはアメリカにない習慣で、娘たちにとっても楽しい日でした。パパやおじいちゃん(ママも!)が鬼のマスクをつけて、福を呼ぶために家のなかや外へ向かって豆を投げました。家のなかは豆だらけ! また、年の数の豆を食べるのも、不思議なおもしろい風習だと思いました。

豆まきにいる「鬼」を、どのように英語で訳して表現をするかご存知ですか? 娘たちは日本語も英語もわかりましたが「鬼」はそのまま「鬼」。英語には訳しませんでした。

童話によく出てくる日本の鬼は、devilやdemonのようなものではないと私たちは思いました。日本の童謡「小さい秋みつけた」を英訳して、切り紙で表現をしたとき、鬼をメインキャラクターに選びました。鬼たちは一生懸命、秋を探します。娘たちと話をして、鬼はかわいくて心優しい感じにしようと決めました。おそろしい鬼ではなく、ニコニコしている青い鬼や赤い鬼、黄色い鬼を作りました。娘の優しい心や考えのおかげで、こわい鬼のイメージからかわいい鬼へ変わったのです。やっぱり子どもの意見は大事ですね。

 

日本はまだ寒いと思いますが、春はもうすぐ来ます。冬のおいしい鍋やカレーライス、豚汁、肉まん、カレーまん、栗ご飯や炊き込みご飯などなど、たくさんたくさん、家族で楽しく、おいしく食べてください! それから、豆をまいて、鬼にあいさつして、福がいっぱい、あなたのお家に訪れますように。Valentineには大事な人や子どもにもプレゼントして、ワクワクほかほかのおいしい2月でありますように!

 

teri11